ゲームを抱いて

ゲームの話を中心にくだを巻く、場末のマジシャンにも劣る語彙力不足と致命的なまでに不器用な文体をお楽しみ下さい。

ドラクエの『おなべのふた』について考える

ドラゴンクエストシリーズのⅢから登場した『おなべのふた』。
防具の盾として、大抵のキャラクターが装備できる代わりに防御力の上昇は雀の涙といった性能は、シリーズお馴染みとしてドラクエファンには受け継がれています。
ドラクエ制作のモデルとなった『ウィザードリィ』にも『ユニークアイテム』と呼ばれるコレクター要素をくすぐるアイテムはありましたので、そこから着想を得ているのかもしれません。


しかし現代のステンレスの様な軽くて硬そうな材質ならまだしも、ドラクエの世界はテンプレともいえるハイ・ファンタジーな世界ですので、恐らく木で組み立てた簡易なふたではないでしょうか。


そうなると気になるのが『おなべのふた』でいかほどの効果を得ることができるのか。
科学的に~とかゲームの都合とか全部放り投げて考えてみることにします。


・ 何故店の商品リストにいれたのか。

そもそもまともな商売観を持っているならば、日常用品を防具にしようなんて考えません。というかセットでなべ本体も売らないとかセコくないですか?

しかし他のラインナップを見てみると『木の帽子』や『かわのたて』と、荒削りながらもしっかりとした防具が存在しているわけで、詐欺を働いている様にも見えません。だとするならばそこには店主の見えざる意図があるはず。
まずは仮説を立ててみましょう。


仮説その①
冒険初心者への配慮


冒険者ならば誰だってスタートは未経験です。
いきなり盾や防具といった非日常の装備では、いざという時に動きが制限されることでしょう。

まずは慣れる為にも、武器はともかく防具を使い慣れた日常品から拝借することで、戦闘中の負担を軽減できるかもしれません。
最悪逃げる時も所詮は鍋の蓋、その場に捨てて少しでも身を軽くすれば逃走成功率も上がるでしょう。



仮説その②
その地に住む人達のため

街の住人からしてみれば防具なんて装備したりしません。

しかし、街にモンスターが侵入した場合にいつでも冒険者が滞在しているとは限りません。
仮説①と重なりますが、武器にしても防具にしても、使い慣れていない装備品は却って自身の行動を妨げます。
日本の歴史でも、農民に依る大規模な反乱『一揆』は農具を持って戦に赴いたそうですから、高価なものが購入できないとくれば、身近で手に馴染むものを選ぶのは納得できます。


冒険者から見て異端の存在でも、市民にとっては『おなべのふた』は身近なもので身を守れる、頼れる存在に映るでしょう。



仮説その③
商人の稼ぎの足しにしたい


武器にせよ防具にせよ、どちらも商品である以上、仕入れは必ず必要です。
食料品と違って腐る心配が無いので長持ちするとはいえ、どれだけ冒険者が訪れるか分からない町では数を仕入れても店の肥やしとして終わってしまう可能性が大です。
かといって小数を発注するのは長い目で見るとお金がかさみます。

それならばどこにでもあるものを防具として売ることで、多少なりとも利益がでますし、商品棚に空きがあるよりたくさん置いておいた方が客の購買欲をそそることでしょう。日々の利用客が多いコンビニでL○キとかファ○チキの様なカウンターフーズを大量に並べてたりしますよね?あれと同じです。


・効能は如何程?


取り敢えずざっと仮説を挙げていきましたが、気になるのは実際に装備したとして、「モンスターの攻撃にどれだけ耐えられるのか」だと思います。

これから『おなべのふた』がどれだけ役に立つのか考えていきましょう。

・おなべのふたを装備するとして


さて、実際に『おなべのふた』を盾として扱う場合のデメリットとして、盾の持ち方という問題が生じてきます。

実際にお家のおなべを盾の様に持ってみれば(やるなら誰もいないところでやりましょう。貴方を大切に育ててくれたご両親が心配します)分かると思いますが、取っ手を摘まむ形、つまり指と指の間で挟むか手のひら全体で包み込む様に持っていませんか?

本来の盾の取っ手は

[

↑の様な形をしており、指全体で掴みます。ジャンケンのグーの形ですね。
当然、後者の方が指、手、腕全体に力が加わるので、安定して持つことができます。

『おなべのふた』を使用して攻撃を防ぐにあたり、一撃目を防いだとしてもバランスを崩しやすく、ふたを落とすか痛恨の一撃をもらうかどちらかの様な気がします。


・『おなべのふた』ここにねむる


上記で挙げましたが、ドラクエの世界観に現在の科学が存在しない以上、おなべのふたの材質は恐らく木なのでしょう。

ドラクエというファンタジーで旅をするなら、様々なことを考えなければいけません。

ここまで読まなくても大概の方は気付いているでしょうが、当然メラ(火の魔法)で燃えます。
だったら魔法を使わない相手に使用すれば良いのでは?と当初は考えてみましたが、そもそも冒険する以上、木という材質がやっかいです。

雨が降った場合、木は湿って柔らかくなります。『いやしの雨』なんて使おうものならパーティーのHPは回復しても『おなべのふた』の寿命は急速に縮みます。

寒い地方で街の宿に辿り着いた時、今度は寒暖差で変形します。じゃあ野宿しようなんて誰かが言い出したら勇者と棺おけ×3が最後に寄った城に速達で送られてしまいます。

因みにこれは"敵の攻撃を受けることが目的の木の盾"であることが問題なのだということです。
同じ木でも靴や帽子は寒暖差で変形はしますしヒビも入るでしょうが、目的が違うのでそこは何とも言えません。


・逆に…というより、正攻法で考える


何だか役立たずみたいに語ってしまいましたが、『おなべのふた』に利用価値が無いのかといえばそうでもありません。

長い旅路になる以上、半日で次の街に着けるとは限りませんから、どこかで野営の準備をする必要があります。
その時に焚き火用の素材としては非常に有効です。

木材をバラで持っていくのはかさばりますが、蓋として袋に入れておけば他のアイテムとの兼ね合いや整理も楽になります。
一回限りという制限はありますが、重ねて2~3入れておけばまず大丈夫でしょう。
他にも薄い木の板であるため、怪我をした場合には添え木としても活躍が見込めます。


そして何より、おなべのふたとして使えます。

野営するなら料理は付き物。もし調理道具のふたが壊れたなら代理には充分です。なんせおなべのふたですから。


戦闘はともかく、旅路には便利かもしれない『おなべのふた』、一度購入して性能をみてみるのは如何でしょうか。




おなべのふたってこんな感じなんですね。
思っていたより作りが丁寧でした。